『させていただきます』の連発はNG?丁寧さの落とし穴と正しい敬語の使い方
「ご確認させていただきます」「対応させていただきます」──丁寧なつもりで使っているこのフレーズ、実は“くどい”“不自然”と感じられているかもしれません。ビジネスの現場では、「丁寧=好印象」とは限らず、敬語の使い方ひとつで信頼度が左右されることも。
この記事では、「させていただきます」の正しい使い方から、多用がNGとされる理由、言い換え表現、シーン別の改善ポイントまで徹底解説。伝わる敬語の選び方を、具体例とともにわかりやすく紹介します。
なぜ「させていただきます」が多用されるのか?
「させていただきます」の意味とは?
「させていただきます」は、日本語の敬語表現のひとつで、「自分の行動を相手の許可や恩恵のもとで行う」というニュアンスを含んだ言い回しです。
たとえば、
-
「提出させていただきます」=(相手に許可をいただいて)提出します
-
「ご案内させていただきます」=(相手のために)ご案内します
といったように、謙譲語(自分をへりくだる言葉)と受け身の意味合いが組み合わさった表現です。
本来は、以下の3つの条件がそろった場合に適切とされています。
-
相手の許可や恩恵を受けている
-
自分が何かの行為をする(自発的な行為)
-
その行為に相手が何らかの関係を持っている
しかし実際には、これらの条件を満たさない場面でも使われることが多く、結果として「過剰な敬語」として違和感を持たれるケースが増えています。
丁寧に見えて実はくどい?多用される理由
ビジネスの現場やメール文面などで「させていただきます」が頻繁に使われるのには、いくつかの背景があります。
■ 理由①:丁寧である=好印象という思い込み
「とにかく丁寧にしておけば失礼にならない」という考えから、多くの人がこの表現を乱用します。しかし、丁寧さが行きすぎるとまわりくどく不自然な印象を与えてしまうことがあります。
■ 理由②:マニュアル・テンプレの影響
接客業やコールセンターなどでは、「させていただきます」が標準的なマニュアル用語として使われています。そのため、社会人になってから自然と身につけ、意味を深く理解しないまま使ってしまうケースが少なくありません。
■ 理由③:断定を避ける日本人特有の文化
「〜します」ではやや強く聞こえてしまうと考え、「〜させていただきます」のようにワンクッション置いた言い回しを好む傾向があります。これは日本語特有の「和を重んじる」文化の表れとも言えます。
🔍まとめ:使い方の「癖」になっていないか見直そう
「させていただきます」は、適切に使えば丁寧で礼儀正しい表現ですが、条件に合わない場面で多用すると過剰敬語として相手に不快感を与えるリスクもあります。まずは意味と成り立ちを理解し、自分の言葉遣いを見直すことが丁寧なコミュニケーションへの第一歩です。
「させていただきます」の連発がNGな理由
不自然で違和感を与える言い回し
「させていただきます」は、一見丁寧に見えますが、連続して使うと不自然さやくどさが目立ちやすい表現です。
たとえば、次のような文を見てみましょう。
本日は資料を送付させていただきます。あわせて、会議のご案内もさせていただきます。ご確認させていただければ幸いです。
この文章は、一文ごとに「させていただきます」が繰り返されており、丁寧さよりも冗長さやわざとらしさが際立ってしまいます。
本来敬語とは、相手に敬意を示しつつも、簡潔でわかりやすく伝えることが大切です。必要以上に同じ表現が続くと、かえって不快感や堅苦しさを与えてしまうため注意が必要です。
本来の意味を逸脱する使い方とは?
「させていただきます」は、本来「相手の許可や恩恵を受けて、自分が行動する」場合に使うのが正しいとされています。
しかし、実際には次のような意味の条件を満たさない場面でも頻繁に使われています。
❌ 誤用例:
-
「少々お待ちさせていただきます」
-
「拝見させていただきます」
-
「参加させていただきますようお願い申し上げます」
これらの例では、「自分が主語の能動的行為」でないにもかかわらず使われており、敬語の本来の意味と文法的な整合性がとれていない表現になっています。
とくに「拝見する」はもともと謙譲語であるため、「拝見させていただく」というのは二重敬語かつ過剰な表現とされ、文法的にも不適切です。
聞き手が抱くネガティブな印象
丁寧に言っているつもりでも、聞き手にとっては「させていただきます」の多用が次のようなマイナス印象を与えることがあります。
▶ 違和感・まわりくどさを感じる
-
「この人、何を言いたいのか分かりにくい」
-
「言葉のセンスが古臭く感じる」
▶ 空回りした丁寧さに映る
-
「過剰な敬語で、かえって軽薄に見える」
-
「実務経験が浅い印象を受ける」
▶ ビジネスの信頼感を損なうことも
-
とくに社外メールやプレゼン資料などでは、過剰な敬語表現が誤解やストレスの原因になりかねません。
相手が敬語のニュアンスに敏感な場合、「基本がわかっていない」と評価を下げられる恐れもあります。
🔍まとめ:丁寧さ=好印象とは限らない
「させていただきます」は便利な表現ですが、意味を理解せずに連発すると逆効果になるリスクがあります。
本来の意味を正しく把握し、シンプルで的確な敬語を使い分けることが、相手に信頼される言葉遣いの第一歩です。
正しく使うには?「させていただきます」の使用基準
「許可」「恩恵」「状況的制約」があるときのみ使用OK
「させていただきます」は、単なる丁寧語ではなく、相手の「許可」や「恩恵」があって初めて成立する謙譲表現です。適切に使うためには、以下の3つの条件を満たしているかを確認することが大切です。
✅ 使用してよい3つの条件
-
相手の許可・了承がある
例:「ご承諾をいただいた上で、提出させていただきます」 -
自分の意思で行う能動的な行動である
例:「担当させていただく」「発表させていただく」 -
その行動が相手に直接的な関係を持つ
例:「ご来社いただいた方にご案内させていただきます」
これらの条件がそろっている場合に限り、「させていただきます」は自然で適切な敬語として使えます。逆に、条件を満たさないのに使うと、過剰表現・誤用と見なされるリスクがあります。
適切な使用例とNG例を比較
【使用OKの例】
表現 | 理由 |
---|---|
ご来場いただいた皆様に、説明させていただきます | 相手の行動(来場)に対して、自分が説明するという能動的な行動だから |
お申し出いただいた件、こちらで対応させていただきます | 相手の依頼に対し、許可を得て行動する場面に該当 |
お時間をいただいた上で、ご説明させていただきます | 相手の時間的配慮=恩恵を受けた上で行動しているためOK |
【NGの例】
表現 | なぜNGか? |
---|---|
こちらをご覧させていただきます | 「見る」は自分の一方的な行為であり、許可・恩恵に当たらないため不適切 |
少々お待ちさせていただきます | 「待つ」は受け身の行動であり、自発的でも能動的でもないため不自然 |
メールを送信させていただきました | 単なる業務連絡に「恩恵」や「許可」は不要。過剰表現とされることがある |
🔍ポイントまとめ:使う前に「3つの条件」をチェック!
「させていただきます」は、ただの丁寧な言葉ではなく“相手との関係性”を前提とした表現です。
言う前に一度、「許可・恩恵・相手との関係」の3点がそろっているかを確認しましょう。そうすることで、無理なく自然な敬語表現ができ、相手に与える印象もより良くなります。
代わりに使える!スマートな言い換え表現
「いたします」「行います」「対応いたします」などの例
「させていただきます」の多用を避けるためには、よりシンプルで自然な敬語に置き換えることが効果的です。以下のような表現は、意味を過不足なく伝えつつ、丁寧さも保てる便利な言い換えとしておすすめです。
✅ 言い換え例一覧
よくある表現 | 言い換え例 | コメント |
---|---|---|
提出させていただきます | 提出いたします | 一般的な謙譲語でOK |
ご案内させていただきます | ご案内いたします | 過不足のない丁寧表現 |
対応させていただきます | 対応いたします | ビジネスメールにも適した自然な敬語 |
開催させていただきます | 開催いたします/実施します | 状況に応じて使い分け可能 |
送付させていただきます | お送りします | より親しみやすく、スムーズな印象に |
ポイントは、「~いたします」「~します」などの単純な謙譲語・丁寧語を使うだけで、十分に礼儀が伝わるという点です。
自然な敬語表現で信頼感アップ
過剰な敬語は「気を遣いすぎ」「マニュアル的で機械的」といった印象を与えがちですが、自然で的確な敬語は落ち着きと信頼感を演出することができます。
▶ 自然な敬語にすると得られる効果
-
💬 話し言葉でもスッと伝わる
→「ご説明いたします」のように、口にしても不自然さがない -
🧠 受け手が理解しやすい
→ 回りくどさがないため、要点が伝わりやすい -
🤝 信頼感・好印象につながる
→ 言葉遣いに無理がなく、相手に安心感を与える
▶ 言い換えに迷ったときのチェックポイント
-
「本当に相手の許可や恩恵があるか?」
-
「短く言っても意味は通じるか?」
-
「声に出して読んだときに自然か?」
これらを意識するだけで、「伝わる」「信頼される」敬語表現にグッと近づきます。
🔍まとめ:言葉は“丁寧”より“的確”が大切
「させていただきます」は便利ですが、万能ではありません。
丁寧さにとらわれすぎず、相手に伝わる自然な表現を選ぶことが、スマートなコミュニケーションの鍵です。
よくあるシーン別|敬語の改善ポイント
メール・電話・会議でのNG例と改善例
ビジネスの現場では、状況に応じた敬語の使い分けが求められます。丁寧に言ったつもりでも、「くどい」「不自然」と感じさせる表現は信頼を損なうことも。
以下に、メール・電話・会議でよくあるNG敬語と改善例を紹介します。
📧 メールでのNG例
NG:
本日、資料を送付させていただきます。ご確認させていただければと存じます。
改善:
本日、資料を送付いたします。ご確認いただけますと幸いです。
✅ ポイント:
「させていただきます」の連発を避け、必要な敬意だけを残した簡潔な表現に。
📞 電話でのNG例
NG:
少々お待ちさせていただきますので、そのままお待ちいただけますでしょうか。
改善:
少々お待ちください。そのままお待ちいただけますでしょうか。
✅ ポイント:
「待たせる側」が「お待ちさせていただく」のは不自然。「お待ちください」が最も適切。
🗣 会議でのNG例
NG:
本件についてご説明させていただきます。
改善:
本件についてご説明いたします。
✅ ポイント:
会議やプレゼンでは、スッキリした敬語が信頼感を与える。過剰な表現は逆効果。
上司・取引先とのやりとりで注意したい表現
上司や取引先とのやりとりでは、丁寧さだけでなく、「相手との立場差」に応じた敬語の質が求められます。
⚠️ 注意したい表現と改善例
NG表現 | 改善例 | 理由 |
---|---|---|
○○の件、承知いたしました | ○○の件、かしこまりました | 上司や顧客に対しては「かしこまりました」の方が丁寧で柔らかい |
おっしゃられた通りです | おっしゃる通りです | 「おっしゃる」自体が敬語のため、二重敬語になる |
拝見させていただきます | 拝見いたします | 「拝見」は謙譲語なので、「させていただく」は不要 |
📝 上司・顧客との会話で意識したいこと
-
二重敬語に注意:「ご確認させていただきます」などは過剰敬語になりがち。
-
口調のやわらかさも大事:「承知しました」より「かしこまりました」は印象がよい。
-
簡潔かつ丁寧を意識する:言葉数が少なくても、礼は尽くせる。
🔍まとめ:状況に応じた「敬語の引き算」がカギ
丁寧な言葉づかいは社会人として基本ですが、相手や場面に合わせて“ちょうどよい敬語”を選ぶことが信頼感アップにつながります。
NG敬語をそのままにせず、改善ポイントを押さえるだけで、あなたの印象は大きく変わります。
丁寧=くどい?誠意が伝わる言葉遣いとは
相手視点を意識した敬語の選び方
丁寧に伝えようとする気持ちは大切ですが、それがかえって「まわりくどい」「形式的」と受け取られてしまうこともあります。大事なのは、「どれだけ丁寧に言うか」ではなく、**「相手にどう伝わるか」**という視点です。
▶ 相手が求めているのは「礼儀」よりも「配慮」
たとえば次のような敬語は、一見丁寧ですが、実際には受け手にストレスを与えることがあります。
✕:
本日はご多忙のところ貴重なお時間をいただきまして、誠に恐縮ではございますが、以下の内容につきましてご確認させていただければと存じます。
◯:
ご多用のところ恐れ入りますが、以下の内容をご確認いただけますと幸いです。
✅ ポイントは、「読み手がすっと理解できること」=相手ファーストな表現。
回りくどい言い回しよりも、簡潔で誠意が伝わる言葉のほうが好印象につながります。
「丁寧さ」と「わかりやすさ」のバランスをとるコツ
丁寧すぎる敬語は、「伝わらない」「冗長」「冷たく感じる」といったマイナス要素を生むことも。
そこで重要になるのが、丁寧さとわかりやすさのバランスです。
✅ バランスをとる3つのコツ
-
一文を短くする
→ 丁寧表現でも文が長くなると、読みにくくなる。
例:「~していただければと存じます」→「~していただけますと幸いです」 -
主語と動詞を明確にする
→ 主語が曖昧なまま丁寧にしても伝わらない。
例:「こちらで対応させていただきます」→「私が対応いたします」 -
目的を最初に伝える
→ 長い前置きよりも、要件を先に伝えると誠実な印象に。
例:「ご連絡させていただきましたのは~」→「○○の件でご連絡いたしました」
▶ 「誠実さ=わかりやすさ」である
誠意は、言葉を飾ることではなく、相手に寄り添う気持ちがにじむかどうかで伝わります。
そのためには、「きれいな言い回し」よりも、「正しく、無理のない表現」で伝えることが効果的です。
🔍まとめ:敬語は“ていねい”より“ていねいに伝わる”かが大切
-
「させていただきます」の連発よりも、自然で端的な表現の方が伝わる
-
相手が理解しやすい言葉=信頼される言葉
-
丁寧にしすぎるより、「配慮のある表現」が印象アップにつながる
まとめ|敬語は「多用」より「適所」で使うのがカギ
「丁寧に話そう」と思うあまり、つい連発してしまいがちな「させていただきます」。しかし、敬語は使えば使うほど良いわけではありません。むしろ、適切な場面で、適切な形で使うことが信頼や誠意を伝えるカギとなります。
本記事の要点をおさらい
-
「させていただきます」は本来、相手の許可や恩恵があって初めて使うべき表現
-
多用すると不自然でくどくなり、逆に信頼感を損なうことも
-
「いたします」「行います」など、スマートな言い換え表現を覚えておくと便利
-
メール・電話・会議など、シーンごとの使い分けが重要
-
丁寧さだけでなく「わかりやすさ」「相手視点」を意識することが、自然な敬語の第一歩
最後に:敬語の目的は「形」ではなく「気持ち」を伝えること
敬語は、自分の立場をわきまえ、相手に敬意を示すための手段です。しかし、表現に気を取られすぎて伝えたい内容がぼやけてしまっては本末転倒です。
大切なのは、「どんな言葉を選ぶか」ではなく、その言葉が“どう伝わるか”を意識すること。
丁寧すぎず、くだけすぎず、「ちょうどよく、自然」な言葉遣いを意識するだけで、あなたの印象や信頼感は大きく変わります。
📝 今日からできる一歩:
-
「させていただきます」→「いたします」に言い換えてみる
-
メールを送る前に、「この敬語、相手にとって読みやすいか?」と一度見直す
敬語は、「多用」するものではなく、「適所」で使ってこそ活きる表現です。
スマートな言葉選びを身につけて、信頼されるコミュニケーションを目指しましょう。


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