「的を得る」「的を射る」正しいのはどっち?意味・使い方・語源まで徹底解説!
「的を得た意見ですね」…その言い回し、実は間違いかもしれません。
「的を得る」と「的を射る」、どちらが正しい表現なのか、一度は迷ったことがある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、両者の意味や語源、実際の使われ方、文化庁の見解までを徹底解説。ビジネスや日常会話でも恥をかかないための使い分けのコツも紹介します。「正しい日本語」とどう向き合うべきか、あなたの言葉選びに役立つヒントが満載です。
✅ 結局どっちが正しい?「的を得る」と「的を射る」の違いとは
「的を得る」ってどういう意味?
「的を得る(まとをえる)」という表現は、「物事の核心をついている」「本質をとらえている」という意味で使われることが多く、実際に日常会話やビジネスの場面でもよく耳にします。たとえば「その意見は的を得ているね」といった具合です。
しかし、この表現は本来の慣用句としては誤りとされてきました。理由は、「“的”は“射る”ものであり、“得る”ものではない」という語源的な指摘によるものです。ただし、近年では「的を得る」も一定の理解のもとで使われているため、完全な間違いとは言い切れないという立場も存在します。
「的を射る」はどんな使い方をする?
一方、「的を射る(まとをいる)」は正しい慣用句とされており、古くから使われてきた表現です。こちらも意味としては「物事の本質や核心を突いている」「要点を正確に捉えている」といった内容になります。
使い方の例としては、「その指摘はまさに的を射ている」「彼の発言は的を射た内容だった」などがあります。弓矢で的を射抜くように、核心を的確に突く様子をイメージした比喩表現です。
「的を射る」は、公的文書や正式なスピーチなど、フォーマルな場面でも違和感なく使えるため、正確な日本語を意識する場では積極的に使いたい表現です。
正しい日本語は「的を射る」!
結論から言えば、正しい日本語として認められているのは「的を射る」です。国語辞典や文化庁の見解でも、「的を射る」が本来の表現であり、「的を得る」は誤用とされることが多いです。
ただし、文化庁の調査によると、「的を得る」という表現を使う人も一定数おり、その使用が広がっているのも事実です。そのため、厳密な場では「的を射る」を使い、カジュアルな会話では「的を得る」が自然に受け入れられることもあります。
迷ったときは、「的を射る」を使うことで間違いがありません。正しい言葉遣いを意識することで、相手により明確な印象を与えることができるでしょう。
✅ 「的を得る」は誤用?実は誤用とは言い切れない理由
実際によく使われているのはどっち?
「的を射る」と「的を得る」のどちらがよく使われているのかについては、実際の会話やインターネット上の文脈によって差があります。SNSやブログ、ニュース記事などを見てみると、「的を得る」という表現も頻繁に登場しており、多くの人が自然な日本語として使っているのが現状です。
一方で、新聞や書籍、ビジネス文書などのフォーマルな文章では「的を射る」が多く使われる傾向にあります。これは、文章を書く際に正確さや伝統的な表現が重視されるためです。
つまり、「的を得る」は間違いだと指摘される一方で、実際の使用頻度ではかなり一般化しているという矛盾した現状があるのです。
文化庁も容認?「的を得る」の扱い
文化庁が公表している「国語に関する世論調査」では、「的を射る」と「的を得る」のどちらが正しいと感じるかについて定期的に調査されています。過去の調査結果では、「的を得る」を“正しい”と認識している人の割合が一定数おり、特に若年層でその傾向が強く見られます。
文化庁はこうした実態を踏まえ、「本来は“的を射る”が正しいが、“的を得る”という表現も広く使われるようになってきた」と一定の理解を示しています。完全に“誤用”と断言せず、時代とともに変化する言葉の使われ方を受け入れる姿勢を見せているのです。
このことからも、「的を得る」は“誤用”というより、“慣用的に使われてきた新しい表現”と捉えることができるでしょう。
時代とともに変わる“正しさ”の感覚
日本語に限らず、言葉の“正しさ”は時代や文化によって変化するものです。たとえば、「全然大丈夫」や「的を得る」など、かつては誤用とされていた表現も、現在では多くの人が違和感なく使っているケースが増えています。
言葉は“生き物”といわれるように、使う人の数や場面によってその意味や正しさの基準が少しずつ変わっていきます。「的を得る」も、まさにその変化の過程にある言葉だといえるでしょう。
もちろん、フォーマルな場面では本来の表現である「的を射る」を使うのが望ましいですが、日常会話やカジュアルな文章では「的を得る」が自然に通じる場面も少なくありません。相手や文脈に応じて使い分ける意識を持つことが、現代の日本語における“正しさ”のバランスなのです。
✅ 「的を射る」の語源を知れば納得!意味の背景にあるストーリー
「的を射る」は弓道から来た表現
「的を射る(まとをいる)」という表現は、もともと弓道などの武道に由来する言葉です。弓矢で狙いを定めて的(まと)を正確に射抜く行為が語源となっており、「目標に的確に当てる」「ねらった通りの成果を得る」というイメージから、物事の核心を突くという意味へと発展しました。
この言葉の成り立ちには、日本人の精神性や武道の美学も反映されています。弓道では、ただ的に当てればよいというわけではなく、姿勢や集中力、呼吸といった要素を大切にしながら、真っ直ぐに矢を放つことが求められます。そのため「的を射る」は、単なる成功ではなく「本質を見極めて正しく行動する」ことを象徴する表現でもあります。
このように、「的を射る」は日本の文化や価値観に根ざした深い意味を持つ慣用句なのです。
比喩としての使われ方が一般化した
もともとは実際に弓で的を射る行為を表していた「的を射る」ですが、時代とともにこの言葉は比喩表現として定着していきました。現在では、スポーツや武道とは無関係な場面でも、「的を射た意見」「的を射る発言」などの形で使われ、物事の本質や重要なポイントを的確に突いていることを意味します。
たとえば、会議の場で「その提案は的を射ているね」と言えば、「課題の核心を突いた良い提案だ」というポジティブな評価になります。ニュース記事や評論などでも頻出する表現であり、説得力のある主張や分析に対してよく用いられます。
このように「的を射る」は、実際の武道の枠を超えて、現代社会においても広く通用する表現として定着しており、その背景には「狙い通りに成功する」「ズバリ核心を突く」といったニュアンスが込められているのです。
✅ 「的を得る」が広まった理由とは?
言い間違い?それとも自然な言葉の変化?
「的を得る(まとをえる)」という表現は、本来の慣用句「的を射る」とは異なるものですが、現在では広く使われていることから、“誤用”というよりも“自然な言語変化”の一例と見ることができます。
もともとは「的を射る」が正しいとされていましたが、人々のあいだで「的=目標」や「得る=つかむ・捉える」という意味が結びつき、「的を得る=目標を捉える」という解釈が生まれたと考えられます。このように、言葉が本来の意味からずれて広まるのは、他の日本語でもよく見られる現象です。
たとえば、「情けは人のためならず」や「役不足」なども、元の意味とは異なる理解が定着しつつあります。「的を得る」もその一つであり、“言い間違い”というよりは、“意味の連想に基づく自然な変化”と考えることができるでしょう。
「的を得た発言」などの表現に引っ張られた可能性
「的を得る」という表現が広まった背景には、「的を得た発言」「的を得た指摘」など、実際に違和感なく使われるフレーズが多く存在することも影響していると考えられます。
特に「得る(える)」という動詞は、「成果を得る」「信頼を得る」「情報を得る」など、ポジティブな印象のある言葉であるため、「的を得る」という表現も自然に受け入れられやすかったのです。また、「的確」「要点を得る」「核心を得る」など、似た意味の言葉にも“得る”が使われていることから、言語的な連想が働いたと見ることができます。
さらに、発音の響きとしても「的を得る」は口にしやすく、話し言葉としてスムーズに使えるため、会話の中で広まっていった可能性もあります。
このように、「的を得る」が一般的に使われるようになった背景には、言葉の意味の連想・響きの自然さ・日常会話でのなじみやすさといった複数の要因が重なっているといえるでしょう。
✅ ビジネスでも迷わない!正しい使い分けのコツ
「的を射た発言」はフォーマルな場で好印象
ビジネスシーンでは、言葉の正確さや信頼性が求められるため、誤用とされる表現を避けるのが基本です。そういった場面では、正しい慣用句である「的を射る(的を射た発言)」を選ぶことで、相手に好印象を与えられます。
たとえば、プレゼンや会議で「そのご意見は的を射ていますね」と言えば、「要点を的確に捉えている」という意味が伝わりやすく、知的で落ち着いた印象を与えることができます。特に上司や取引先との会話など、信頼を重視する場面では、正しい表現を意識することが重要です。
「的を得る」が誤用と指摘される可能性がある以上、フォーマルな文章・スピーチ・公式文書では避け、「的を射る」を使うのが無難です。
迷ったら「的確」や「核心を突く」で代用する手も
「“射る”と“得る”どっちだったっけ…」と迷ったときに、無理に使おうとして間違えるよりも、「的確な意見」「核心を突く発言」など、別の言い回しに置き換えるのも賢い方法です。
たとえば、
-
「的を射た指摘」→「的確な指摘」
-
「的を得た質問」→「核心を突いた質問」
このように言い換えることで、意味を正しく伝えつつ、誤用のリスクも回避できます。特にメールや提案書など、文章で伝える際には、簡潔で明快な言葉にすることで、相手により良い印象を残せます。
言葉の正しさに自信がないときほど、“確実に通じる表現”を選ぶ意識が大切です。言い換えの引き出しを持っておくことで、どんな場面でもスマートに対応できるようになります。
✅ まとめ|知っておきたい「言葉の正しさ」と付き合うヒント
「正しさ」は一つじゃない
「的を射る」と「的を得る」のように、どちらが正しいのか迷ってしまう表現は、日本語には多く存在します。確かに文法的・語源的には「的を射る」が正しいとされますが、実際の会話や文章の中では「的を得る」も自然に使われており、多くの人に意味が通じています。
ここで大切なのは、「正しさ」にもいくつかの視点があるということ。
・辞書や文法に基づく“伝統的な正しさ”
・多くの人が実際に使っている“実用的な正しさ”
この2つのバランスを理解することで、言葉に対して柔軟な感覚を持てるようになります。
状況や相手に合わせて、どの“正しさ”を選ぶか。言葉に対するこの視点が、コミュニケーションの質を高めるヒントになるのです。
言葉は“通じること”が何より大事
言葉の本来の目的は、「正しく使うこと」よりも「相手に伝えること」です。たとえ語源的には誤用だったとしても、文脈の中で意味が明確に伝わり、誤解が生まれないのであれば、それは十分に“通じる言葉”だといえるでしょう。
たとえば、友人との会話で「的を得たね!」と褒めたとき、相手がそれをポジティブに受け取れば、コミュニケーションは成立しています。逆に、形式にとらわれすぎて会話がぎこちなくなってしまっては本末転倒です。
もちろん、フォーマルな場面では正確な表現を意識することが大切ですが、日常会話では“伝わること”を最優先にしてもよいのです。
言葉は生きものです。時代とともに変わり、意味も使い方も少しずつ変化していきます。「正しさ」にとらわれすぎず、相手との関係性や状況に合わせて、柔軟に使いこなしていくことが、現代の日本語との上手な付き合い方といえるでしょう。


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