
気づけば同じフレーズが頭の中をぐるぐる…。止めたいのに止まらない「イヤーワーム」に悩まされた経験はありませんか? 実はこれは、脳の記憶回路や心理状態と深く関わる、ごく自然な現象です。
本記事では、イヤーワームの正体を脳科学の視点から解説し、なぜ起こるのか・どんな人がなりやすいのか・どうすれば止められるのかを分かりやすく紹介します。知識と対策を知っておけば、「頭の中のBGM」ともうまく付き合えるようになります。
そもそも「イヤーワーム」とは?
「耳の虫」と呼ばれる現象の意味
「イヤーワーム(earworm)」とは、頭の中で音楽が無意識に繰り返し流れ続ける現象のことです。突然あるメロディや歌詞が思い浮かび、止めようとしても勝手にリフレインしてしまう──そんな経験は誰にでもあるはずです。
この現象は「耳に残る曲が“虫のように”頭の中に入り込み、出ていかない」ことから「イヤーワーム=耳の虫」と呼ばれるようになりました。特定の曲を聴いた直後や、同じフレーズを何度も繰り返す曲に触れたときに起こりやすいといわれています。
英語では「INMI(Involuntary Musical Imagery)」と呼ばれる
学術的には「INMI(Involuntary Musical Imagery)」と呼ばれ、直訳すると「不随意な音楽的イメージ」という意味です。
つまり、自分の意思とは関係なく頭の中で音楽が再生される現象で、脳科学の研究対象にもなっています。調査によると、成人の約90%が少なくとも週に1回はイヤーワームを経験しているとされ、非常に一般的な現象だと分かっています。
一見すると不思議で少し不快に思えるかもしれませんが、イヤーワームは脳の「記憶」や「音楽処理機能」が正常に働いている証拠でもあるのです。
なぜ頭の中で音楽が止まらなくなるの?




脳の記憶回路と音楽の関係
イヤーワームは、脳の「記憶をつかさどる回路」と深く関係しています。音楽は言葉や映像よりも記憶に残りやすく、海馬や前頭葉といった記憶・思考に関わる部位が活性化することが分かっています。
特にメロディや歌詞の一部が強く記憶されると、その情報が「短期記憶」から「長期記憶」へと橋渡しされる際にループ再生のような状態になり、頭の中で繰り返し流れ続けるのです。
メロディ・リズム・歌詞が引き金になる理由
イヤーワームを引き起こす曲には共通点があります。
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シンプルで覚えやすいメロディ
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一度聴くと口ずさみやすいリズム
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強い印象を残す歌詞のフレーズ
このような要素を持つ楽曲は脳に強く刻み込まれやすく、無意識のうちに再生されます。特に「サビだけ繰り返す」「短くリズミカルなフレーズ」などは、脳が自然にループ再生してしまう代表的な引き金です。
心理的要因(ストレス・空き時間・繰り返し聴いた曲)
イヤーワームは脳の働きだけでなく、心理的な状態とも関係しています。
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ストレスがたまっているとき:不安や緊張を和らげようと、脳が「馴染みのある音楽」を無意識に再生することがあります。
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空き時間やぼんやりしているとき:やることがない状態だと、脳は自動的に過去の記憶を呼び起こし、音楽が浮かびやすくなります。
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同じ曲を繰り返し聴いたあと:繰り返し入力された情報は「脳の残響」として残りやすく、イヤーワームが起きやすくなります。
つまり、イヤーワームは「脳の記憶機能 × 音楽の特徴 × 心理的状態」が重なったときに強く現れる現象なのです。
イヤーワームになりやすい人の特徴




音楽好き・リズム感がある人
普段から音楽をよく聴いたり、歌や楽器に親しんでいる人はイヤーワームが起きやすい傾向があります。これは「音楽を記憶・処理する脳の回路」が活発に働いているためです。
また、リズム感がある人ほど曲の構造を自然に捉えやすく、特定のメロディやフレーズが脳に刻まれやすいため、ふとした瞬間に再生されてしまいます。
集中力が高い or 逆に注意散漫な人
一見相反するようですが、両方のタイプがイヤーワームを経験しやすいといわれています。
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集中力が高い人は、一度聴いた曲の細部まで記憶してしまい、無意識に再生されやすい。
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注意散漫な人は、隙間時間に脳が「音楽の断片」を呼び起こしやすく、気づけば曲が頭の中で流れている。
つまり「脳が働きすぎても、逆に暇すぎても」イヤーワームが起こりやすくなるのです。
不安傾向やストレスを抱えやすい人
不安やストレスが強い人は、頭の中に同じ思考やイメージが繰り返し浮かぶ傾向があります。その一環として、音楽のフレーズもループしやすくなります。
また、イヤーワーム自体が「不安を一時的にまぎらわせる役割」を果たしている場合もあります。慣れ親しんだ曲が脳内で流れることで、安心感を得ているのです。
👉 まとめると、イヤーワームは「音楽的な感受性」「脳の使い方のクセ」「心理的な状態」の3つが重なると起こりやすい現象です。決して異常ではなく、その人の個性や状況が反映されているだけといえます。
イヤーワームを止める方法・対策




別の曲を聴いて「上書き」する
頭の中で繰り返されている曲を止めたいときは、あえて 別の曲を聴いて脳を“上書き”する のが有効です。特に、リズムが単調で落ち着いた曲や、自分にとって馴染みのないジャンルの音楽を選ぶと効果的。新しい刺激を与えることで、イヤーワームが自然に消えていきます。
声に出して歌う/リズムを崩す
頭の中で流れるフレーズを実際に 声に出して歌う と、脳は「曲が完結した」と認識しやすくなり、ループが収まりやすくなります。
また、わざとリズムや歌詞を崩して歌うと、脳が「正しいフレーズ」として処理できなくなり、自然に再生が途切れることもあります。
集中できる作業や会話で気をそらす
イヤーワームは「脳に余白がある」ときに流れやすくなります。そのため、読書や計算、スポーツなど 集中を要する行動 を取り入れると、自然に頭の中の音楽が薄れていきます。
友人や家族との会話など、外部からの刺激を受けるのも効果的です。「別の情報を処理する」ことで脳が切り替わり、イヤーワームが収まりやすくなります。
睡眠や休息で脳をリセットする
どうしてもイヤーワームが続くときは、無理に止めようとせず 休息や睡眠で脳をリセット するのが一番の方法です。疲労やストレスが蓄積していると、脳の情報処理が滞りイヤーワームが起こりやすくなります。
短い昼寝や深呼吸、軽いストレッチなどで心身を整えるだけでも効果があります。
👉 ポイントは「無理に消そうとしないこと」。イヤーワームは脳の自然な働きなので、気楽に「上書きする・外部の刺激を入れる・リセットする」という3ステップで対応すると安心です。
イヤーワームとうまく付き合う方法




創作活動や勉強に活かす「リズム効果」
イヤーワームで頭に残ったリズムやメロディは、実は 集中力や作業効率を高める効果 を持っています。たとえば、勉強や仕事の合間に自然と浮かぶ曲を「作業BGM」として意識的に利用すると、一定のテンポが集中のリズムをつくってくれることがあります。
また、作曲や執筆などの創作活動では「無意識に浮かんだフレーズ」が新しいアイデアの種になることも。イヤーワームをネガティブに捉えるのではなく、脳が生み出すリズムを味方にする 発想が大切です。
脳の自然な働きとして楽しむコツ
イヤーワームは、脳が記憶や感情を整理する過程で起こる ごく自然な現象 です。無理に排除しようとすると逆に意識してしまい、余計に長引くこともあります。
そこでおすすめなのが、「イヤーワームが始まったら、しばらく流れに任せてみる」こと。気にせず口ずさんでみたり、「今の気分がこの曲を呼んでいるのかも」と前向きに解釈すると、不思議と不快感が和らぎます。
イヤーワームは「脳が元気に働いているサイン」と考え、小さな脳内BGMとして楽しむ 気持ちを持つと、うまく付き合えるようになります。
👉 対策だけでなく「活かし方」「楽しみ方」を知っておくと、イヤーワームに振り回されるのではなく、生活の中でプラスに変えていけます。
まとめ|イヤーワームは脳の自然な働き。知っておけば怖くない!




イヤーワームは「頭の中で曲が止まらない」という不思議な現象ですが、決して異常なことではありません。むしろ、脳が音楽をしっかり記憶し、活発に働いている証拠 です。
起こる理由には、
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脳の記憶回路の働き
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曲のメロディやリズムの特徴
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ストレスや空き時間といった心理的要因
が関わっていることが分かっています。
そして対策としては、
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別の曲で「上書き」する
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声に出して歌ったりリズムを崩す
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集中できる作業や会話で気をそらす
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睡眠や休息でリセットする
といった方法で十分コントロール可能です。
さらに、イヤーワームを 創作や勉強のリズム作りに活かす こともできますし、ちょっとした「脳内BGM」として楽しむ余裕を持てば、むしろプラスの効果さえ得られるでしょう。
👉 大切なのは「イヤーワームは自然な現象」と知っておくこと。そうすれば不安に感じる必要はなく、むしろ自分の脳の働きを実感できるユニークな体験として受け入れられるはずです。
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