「敷居が高い」は意味を間違えやすい!?|本来の使い方と誤用例を徹底解説
「このお店、ちょっと敷居が高くて入りづらいよね」――
そんなふうに使ったこと、ありませんか?
実はこの「敷居が高い」、多くの人が“本来の意味”とは違う使い方をしている日本語のひとつなんです。
本来は「高級で入りにくい」という意味ではなく、「気まずくて行きづらい」という心理的な感情を表す言葉。
この記事では、「敷居が高い」の正しい意味や由来、誤用される理由、そして正しい使い分け方をわかりやすく解説します。
今こそ、“なんとなく使っていた日本語”を正しく理解して、言葉上手になりましょう。
「敷居が高い」の意味、あなたは正しく使えてる?
「このお店、ちょっと敷居が高くて入りづらいよね」──
そんなふうに言ったこと、ありませんか?
実はこの使い方、多くの人が“間違って”使っているのです。
多くの人が“高級”の意味で使っている?
日常会話では、「敷居が高い=高級そう」「格式があって入りにくい」といった意味で使われることがよくあります。
たとえば、
-
「高級料亭は敷居が高くて入れない」
-
「芸能人が来る店なんて、ちょっと敷居が高い」
といったフレーズが典型的です。
確かに、なんとなく“行きづらさ”を感じるという点では間違いではないように思えますが……
本来の「敷居が高い」は、この“高級感”とはまったく関係がありません。
実は「心理的に行きづらい」ことを表す言葉!
本来の「敷居が高い」とは、
「過去に迷惑をかけたり、気まずい思いをして、その家や人のところへ行きにくい」
という心理的な意味を持つ言葉です。
たとえば、
-
「以前、借りたお金をまだ返していないから、あの家は敷居が高い」
-
「昔トラブルがあって、あの店には顔を出しづらい」
といった場合に使うのが正しい使い方。
つまり、“後ろめたさ”や“申し訳なさ”があるときに生まれる「行きづらさ」こそが、
「敷居が高い」の本来の意味なのです。
多くの人が“格式が高い”“高そう”というイメージで誤用してしまうのは、
「高い」という言葉の印象に引きずられてしまうから。
けれど、本来の意味を知ると、
この言葉が持つ“人の心の機微”を感じられるようになります。
本来の意味:「気まずくて行きづらい」が正解!
「敷居が高い」という表現には、“高級で近寄りがたい”という意味は本来ありません。
もともとは、「謝りたい」「でも顔を出しづらい」というような“気まずさ”や“心理的な距離”を表す言葉なのです。
では、この言葉がどのようにして生まれたのかを見ていきましょう。
「敷居」とは“家の入口のしきい”を意味する
「敷居(しきい)」とは、家の入口や部屋の境にある“木の横棒”のこと。
つまり、家と外の境目を示すものです。
昔の日本では、敷居をまたぐ=その家に出入りする、という行為そのものに「人間関係のけじめ」が込められていました。
たとえば、かつて迷惑をかけた相手の家に行こうとしても、
「申し訳なくて敷居をまたげない」──
そんな感情が生まれたのです。
この“物理的にまたげない境界”が、やがて“心理的に行きづらい”という意味へと変化しました。
「高い」=物理的な高さではなく“心理的な壁”
「高い」という言葉が入っているため、“値段”や“格式”の高さを連想しやすいですが、
ここでの「高い」は「心のハードルが上がる」=心理的な障壁を表しています。
つまり、「敷居が高い」とは、
“その人や場所に対して、心の中に壁を感じている状態”を表す言葉。
「もう顔を合わせづらい」「自分の中で踏み出せない」といった、
人間関係の繊細な気持ちを映した日本語なのです。
「敷居が高い」の本来の由来と背景(謝罪・気まずさ)
「敷居が高い」は、古くは“人との関係を大切にしていた時代”の文化から生まれました。
たとえば――
-
失礼なことをしてしまい、相手の家に行きにくい
-
借りを作ったままで、顔を出すのが気まずい
-
長く疎遠になっていて、今さら訪ねにくい
こうした「人としての申し訳なさ」や「心の距離」を表すときに使われていたのです。
つまり、この言葉には“礼儀を重んじる日本人の心”が息づいています。
「敷居が高い」は、ただの“入りにくさ”ではなく、
相手を思いやる心から生まれた、日本語ならではの情緒的な表現。
この背景を知ると、言葉の深みと美しさがより感じられますね。
誤用の例:「高級で入りづらい」は間違いだった!?
「敷居が高い」という言葉は、日常会話やSNSでよく見かけますが、
実は多くの人が“誤った意味”で使っている日本語の代表格です。
特に、「高級」「格式」「お金がかかりそう」といったイメージで使われるケースは要注意です。
「高級レストランで敷居が高い」は誤用の代表例
たとえば、次のような会話を耳にしたことはありませんか?
「あの高級フレンチ、ちょっと敷居が高いよね」
このように使うと、「高価で入りにくい」「お金持ちの人しか行けなさそう」という意味に聞こえます。
しかし、本来の「敷居が高い」は“気まずさ”や“後ろめたさ”を表す言葉。
つまり、値段や格式の高さは関係ないのです。
もし「高級すぎて入りづらい」と言いたいなら、次のように言い換えるのが正解です。
-
「高級すぎて入りにくい」
-
「ちょっとハードルが高い」
-
「格式があって気後れする」
これらのほうが、ニュアンス的にも正しく伝わります。
なぜこの誤用が広まったのか?(イメージの転化)
では、なぜ「敷居が高い=高級で入りにくい」という誤用が広まったのでしょうか。
理由は、「高い」という言葉が持つ“上質・高価・高レベル”というポジティブなイメージにあります。
もともと「心理的に行きにくい」という意味だったものが、
“行きづらい → 入りづらい → 高級で近寄りにくい”という連想を経て、
徐々に意味がすり替わっていったのです。
さらに、テレビや雑誌などのメディアでも誤用が頻繁に見られたため、
世間一般に“誤った意味”が定着してしまったと考えられています。
正しい使い方・誤った使い方の比較例文
用例 | 正しい or 誤り | 解説 |
---|---|---|
「昔トラブルがあって、あの家は敷居が高い」 | ✅ 正しい | 気まずくて行きづらいという本来の意味 |
「あの高級料亭は敷居が高い」 | ❌ 誤用 | “高級で入りにくい”は誤り |
「先生にご無沙汰していて、今さら訪ねづらい」 | ✅ 正しい | 申し訳なさ・後ろめたさのニュアンス |
「ブランドショップは敷居が高い」 | ❌ 誤用 | 値段や格式の高さには使わない |
「昔の恩師に会うのは、少し敷居が高い」 | ✅ 正しい | 心理的な距離感を表す使い方 |
誤用が広まっているからこそ、
正しい意味を知って使いこなせば、あなたの言葉の印象はぐっと知的に。
「なんとなく」で使うのではなく、本来の背景を理解して使うことが大切です。
「敷居が高い」と混同されやすい類語・表現
「敷居が高い」は、“行きづらい”という感覚を表すため、
似たような言葉と混同されがちです。
しかし、似ているようで実は意味も使う場面も違うのが日本語の奥深いところ。
ここでは特に混同しやすい「ハードルが高い」「格式が高い」「気後れする」との違いを見ていきましょう。
「ハードルが高い」との違い
「ハードルが高い」は、“難易度が高い・達成が難しい”という意味で使います。
たとえば――
-
「この資格試験はハードルが高い」
-
「彼と話すのはハードルが高い」
といったように、“行動に移すための難しさ”を表すのが特徴です。
一方で「敷居が高い」は、**“心理的に行きにくい・気まずい”**という感情面を表す言葉。
難易度の高さではなく、心の中の抵抗感や申し訳なさを含みます。
👉つまり、
-
「挑戦しづらい」なら → ハードルが高い
-
「顔を出しづらい」なら → 敷居が高い
が自然です。
「格式が高い」「気後れする」との使い分け
■「格式が高い」
「格式が高い」は、伝統・地位・社会的な格の高さを指します。
たとえば「老舗旅館は格式が高い」と言うのは正しい使い方。
一方で、それを理由に“入りにくい”と感じる場合でも、「敷居が高い」は誤用になります。
その場合は「格式が高くて気後れする」「緊張する」と表現するのが正解です。
■「気後れする」
「気後れする」は、相手や状況に圧倒されて遠慮してしまうという心理を表します。
つまり「相手が立派すぎて自分が引いてしまう」という感覚。
これも“高級で入りにくい”場面に使いやすい表現です。
👉たとえば、
-
「有名人が多くて気後れする」
-
「高級店はちょっと気後れする」
という言い方なら自然で、誤用にもなりません。
TPOで使い分けたい“似て非なる日本語”
表現 | 意味 | 使う場面の例 | ニュアンス |
---|---|---|---|
敷居が高い | 気まずくて行きづらい | 「以前迷惑をかけて、その家は敷居が高い」 | 心理的な壁・後ろめたさ |
ハードルが高い | 難易度が高く挑戦しづらい | 「この資格はハードルが高い」 | 行動的な難しさ |
格式が高い | 格や伝統・地位が高い | 「老舗旅館は格式が高い」 | 社会的な格の高さ |
気後れする | 相手に圧倒されてひるむ | 「上司の前では気後れする」 | 自信のなさ・遠慮の気持ち |
似たように聞こえる日本語でも、意味の焦点が“感情”か“難易度”か“地位”かによって使い分けが必要です。
言葉を丁寧に選ぶことで、伝わる印象もぐっと正確でスマートになります。
まとめ|言葉の正しい意味を知ると、伝わり方が変わる!
「なんとなく」で使うと誤解を招く日本語
「敷居が高い」だけでなく、私たちは日常の中で“なんとなく”使っている言葉がたくさんあります。
しかし、その“なんとなく”のまま使い続けると、
相手に意図が正しく伝わらなかったり、誤解を招いたりすることも少なくありません。
たとえば「敷居が高い」を「高級で入りづらい」という意味で使うと、
聞き手によっては「その人に後ろめたいことがあるの?」と、まったく違うニュアンスで受け取られることも。
言葉は感情を伝えるツールだからこそ、意味を正しく理解して使うことが大切です。
ほんの少しの違いでも、言葉の選び方ひとつで印象や伝わり方が大きく変わります。
正しい言葉づかいが“知的さ”を伝える第一歩
正しい言葉づかいは、単なるマナーではなく、相手への思いやりや知性の表れです。
「言葉の意味を知ろう」と意識すること自体が、
相手とのコミュニケーションを丁寧にしようとする姿勢につながります。
ビジネスでも日常会話でも、
“誤用を避ける=堅苦しい”ということではなく、
本来の意味を理解して、自分の言葉で的確に伝える力を持つということ。
「敷居が高い」を正しく使えるようになったあなたは、
もうすでに言葉を大切にできる人です。
その意識が、あなたの印象や信頼感をより深く、確かなものにしてくれるでしょう。
💡一言まとめ
言葉の意味を知ることは、「伝える力」を磨くこと。
正しい日本語を使う人は、それだけで“品と知性”が伝わります。


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