なぜこう言うの?日本語の不思議な言い回し20選|意味と由来をわかりやすく解説
「なんで“猫の手も借りたい”の?」「“二つ返事”って、2回返事すること?」
そんなふうに、一度立ち止まって考えると「なぜそう言うの?」と疑問がわいてくる日本語の言い回し、思い当たりませんか?
日常会話やビジネスシーンで当たり前のように使っている表現の中には、意味は知っていても、由来や背景を意外と知らない言葉がたくさんあります。むしろ、改めて考えると「ちょっと変じゃない?」と首をかしげたくなるものも──。
この記事では、そんな“気になるけど、調べたことはなかった”日本語表現を20個ピックアップし、それぞれの意味・使い方・語源をやさしく解説します。
読むだけで、身近な言葉の奥深さや日本語の面白さが再発見できるはずです。
あなたはいくつ、正しく意味や由来を説明できますか?
なぜそう言うの?思わずツッコミたくなる表現20選
1. 猫の手も借りたい
意味| とても忙しくて、誰でもいいから手伝ってほしい状態のこと。
不思議ポイント| 猫って、そもそも何か手伝えるの?
由来|
この言葉は、「猫の手のように何の役にも立たなそうな存在でさえ、手伝ってもらいたくなるほど忙しい」という皮肉と誇張を込めた表現です。
本来“戦力外”と思われる猫ですら、ありがたく感じてしまうほどの切羽詰まった状況を、ユーモラスに伝えています。
豆知識|
江戸時代にはすでに使われていた言い回しで、「猫の手」=「非戦力」の象徴として定着しています。
2. 二つ返事
意味| 相手の依頼などを即答・快諾すること。
不思議ポイント| “2回返事”してるのに、即決?むしろ遅くない?
由来|
この「二つ返事」は、「はい、はい」と即答する様子を表した言葉です。
二度返事することで、迷いやためらいがなく、喜んで応じる気持ちを強調しています。
「間髪入れずに即OK」というニュアンスを持たせるための、いわば“気持ちの二重丸”ですね。
注意点|
「二度返事」と混同すると意味が逆になってしまうので要注意(※「二度返事」は失礼を意味します)。
3. 雨降って地固まる
意味| いったんトラブルが起きたあとに、かえって物事がうまく進むようになること。
不思議ポイント| 雨が降って、地面が固まるって本当?
由来|
雨でぬかるんだ地面が、時間とともに乾いて締まり、かえってしっかりした地面になる――という自然現象が由来です。
そこから転じて、「最初はごたごたがあっても、その後うまくいくようになる」ことのたとえとして使われるようになりました。
活用例|
人間関係や夫婦のけんか、職場のミスの後など、「結果的に良い方向に進んだ」時によく使われます。
4. のど元過ぎれば熱さを忘れる
意味| つらいことや苦しみも、過ぎてしまえば忘れてしまうこと。
不思議ポイント| “のど元”ってどこ?なぜ熱さを忘れられるの?
由来|
熱いものを食べたとき、のどを通るまでは「熱い!」と感じるけれど、過ぎ去ってしまえばその感覚はすぐ薄れる――という体感的な現象からできた表現です。
この言葉は、「人は痛みや反省を時間とともに忘れてしまう」という皮肉や戒めのニュアンスも含んでいます。
使い方の注意|
感情に流されやすい人への忠告や、歴史の教訓を忘れてしまう現象などに用いられます。
5. 足元をすくわれる
意味| 油断していたすきに、思いがけない形で邪魔をされたり、失敗させられること。
不思議ポイント| 足元ってどうやって「すくう」の?
由来|
この表現は、相撲や柔道などで相手の足元を払って転ばせる技から来ています。
「一見安定しているように見える足元を狙われる=油断していると一瞬で倒される」という意味合いが込められています。
現代での使い方|
仕事でのライバルや政界での失脚、SNSでの炎上など、「不意打ちで足を引っ張られる」ときに使われることが多いです。
6. 寝耳に水
意味| 思いがけない出来事に驚くこと。
不思議ポイント| 水が耳に入ったら目が覚めそうだけど、なんで“寝耳”?
由来|
眠っているときに、突然耳に水が入ったら驚きますよね。その“思いもよらない不意打ち”を例えた表現です。
水=突発的な事態、寝耳=油断している状態の象徴です。
活用例|
「突然の人事異動の話に、寝耳に水だった」など。
7. 馬が合う
意味| 相性が良い、気が合うということ。
不思議ポイント| え、馬と?誰と誰の馬が合うの?
由来|
昔の武士が馬に乗って戦ったことに由来します。乗馬では、騎手と馬の相性がとても重要で、うまくかみ合うことを「馬が合う」と表現したのが始まりです。
そこから、人と人の相性を表す言葉になりました。
8. 気が置けない
意味| 気を使わず、遠慮なく接することができる関係。
不思議ポイント| 「気が置けない」って、本当は気を使ってるって意味じゃないの?
由来|
“気を置く”とは=「遠慮する」「気を使う」という意味。つまり、“気が置けない”は「遠慮せずに接せられる=気心知れた関係」のことです。
意味と語感がズレて聞こえるので、誤解されやすい言葉の代表格です。
9. 顔から火が出る
意味| とても恥ずかしいときの感覚を表す表現。
不思議ポイント| 火が出るって、そんなに!?
由来|
極度の羞恥で顔が熱くなる感覚を、火にたとえた表現です。「顔が赤くなる」よりも誇張した強調表現です。
日本語特有の感覚的な誇張表現の一つですね。
10. 棚からぼたもち
意味| 思いがけず幸運が転がり込むこと。
不思議ポイント| ぼたもちって、棚から落ちるの?
由来|
何の努力もしていないのに、たまたま棚から落ちてきたぼたもちを手にする=ラッキーな状況のたとえ。
運任せの幸運や“棚ぼた”という略語でも使われています。
11. 猫をかぶる
意味| 本性を隠して、大人しくふるまうこと。
不思議ポイント| 猫って、そんなにおとなしそう?
由来|
猫はおとなしい印象があるため、裏表のある人が自分の“攻撃性や本音”を隠して、かわいくふるまっている様子を「猫をかぶる」と表現するようになりました。
活用例|
「付き合ったら全然違う!猫かぶってたんだね…」など。
12. 手のひらを返す
意味| 急に態度を変えること。
不思議ポイント| 手のひらを返すだけで、そんなに変わる?
由来|
手のひらをくるっと返す動きが、あっけない変化・急転をイメージさせます。
それまでの態度と真逆になる様子を、シンプルに視覚で表現した表現です。
13. 油を売る
意味| 無駄話をして、仕事をサボること。
不思議ポイント| 油売ってるだけで、サボり?どういうこと?
由来|
江戸時代、油を量り売りしていた商人が、液だれしないよう慎重に扱う間、雑談をして時間をつぶしていたことから「油売り=仕事をしない」イメージに。
そこから転じて「油を売る=さぼる」の意味に定着しました。
14. とんちんかん
意味| 言動がかみ合わず、的外れな様子。
不思議ポイント| 響きが謎すぎる!なぜ“とんちんかん”?
由来|
鍛冶屋が金属を打つときの「トン」「チン」「カン」という音がちぐはぐで合っていない様子から、調子はずれ・まとまりがないことを意味するように。
音の語感から来た、非常に日本語らしい表現です。
15. 三日坊主
意味| すぐに飽きて、続かないこと。
不思議ポイント| なんで坊主?仏教と関係あるの?
由来|
修行を始めたものの、厳しさに耐えられず、3日で出奔(逃げる)してしまう僧をからかった言葉。
現在は「飽きっぽい人」のたとえとして一般化しています。
16. 顎が落ちる
意味| とてもおいしいものを食べたときの驚きを表す言葉。
不思議ポイント| 美味しすぎて顎が落ちる!?
由来|
感嘆するほどおいしい=「顎が外れるほどのインパクト」といった誇張表現。
美味に驚く気持ちをユーモラスに表した擬人的な日本語です。
17. 馬の耳に念仏
意味| ありがたい話も、理解できない相手には無意味というたとえ。
不思議ポイント| 馬の耳に…念仏?聞こえるわけないよね?
由来|
馬は念仏(仏の教え)を理解できませんよね。そのことから、「ありがたいことでも、伝わらなければ無駄」という教訓的な意味合いが込められています。
18. 虎の威を借る狐
意味| 権力者の力を借りて威張る人をたとえる言葉。
不思議ポイント| なぜ“虎”と“狐”?動物たちの関係って?
由来|
中国の寓話が元。狐が虎の背に乗り、「俺は虎より偉い」と他の動物を威嚇するエピソードから来ています。
自分の力ではないのに偉そうな態度をとる人への皮肉です。
19. 肩の荷が下りる
意味| プレッシャーや責任から解放されてホッとする様子。
不思議ポイント| 実際に何か背負ってるわけじゃないのに…?
由来|
昔の荷物運搬(荷を肩で担ぐ)からの比喩表現。
心の中の“重荷”が降りた感覚を、現実の動作になぞらえた表現です。
20. 背水の陣
意味| 退路を断って、全力で物事に挑む覚悟を示す表現。
不思議ポイント| 背中に水?どういう意味?
由来|
中国の戦術で、川を背にして陣を敷くことで「退けない=前に進むしかない」状況を作り、部隊の士気を高めた戦法から。
現代では、「覚悟を決めて挑む」場面でよく使われます。
意味や由来を知ると、日本語がもっと面白くなる
普段、何気なく使っている日本語の表現――
それが、実は何百年も前の生活や文化、思想に根ざしていたと知ったとき、言葉がぐっと奥深く感じられるようになります。
たとえば「猫の手も借りたい」は、単なる比喩ではなく、当時の人々の暮らしの切実さやユーモアが詰まった表現。
「棚からぼたもち」には、仏教文化や昔のおやつ事情まで垣間見えます。
言葉の意味や由来を知ることは、単なる知識以上に、
・会話のネタが増える
・子どもや外国人にも説明できる日本語の教養が身につく
・文章や表現に深みや余韻が出る
といったメリットがあります。
また、そこには“日本人らしい感性”も色濃く表れているのです。
遠回しに伝える奥ゆかしさ、皮肉を込めたユーモア、自然現象や動物にたとえる豊かな想像力――。
言葉の背景を知ることで、「ただの言い回し」が、「心に残る日本語」に変わります。
そんな“気づき”を楽しむことこそ、言葉との付き合い方をもっと面白くしてくれる第一歩かもしれません。
まとめ|“言われてみれば不思議”が、日本語の面白さ
「言われてみれば、たしかに変な言い回しだな」
「なんとなく使っていたけど、こんな由来があったんだ」
そんな“気づき”の連続が、日本語の奥深さや面白さに気づくきっかけになります。
日々の会話で当たり前のように使っていた表現も、意味や成り立ちを知ることで、まったく違った印象に変わることがあります。
単なる言葉の羅列ではなく、昔の人の暮らしや感性、そして時代背景がぎゅっと詰まった文化のかけらだったと気づけば、もっと大切に使いたくなりますよね。
今回紹介したような「不思議な日本語表現」は、会話のちょっとしたネタや、子どもとの言葉遊び、外国人への日本語紹介にもぴったり。
知っているだけで“話の引き出し”がひとつ増える豆知識として、ぜひ記憶にとどめておきたいところです。
これからも、ふとした言葉に「なんでこう言うんだろう?」と立ち止まってみることで、
あなたの中にある日本語の世界が、もっと豊かに広がっていくはずです。


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