【医師監修】指の関節がポキポキ鳴るのはなぜ?|原因・健康への影響・やめたほうがいいケースを解説

指の関節がポキポキ鳴る理由とは?|仕組み・健康への影響・やめたほうがいい場合を解説

指を曲げたときに「ポキッ」と鳴るあの音。ついクセで鳴らしてしまう人も多いですが、「関節が太くなる」「体に悪い」といった噂を耳にしたことはありませんか?
実は、その音の正体は“関節内の気泡”によるもので、必ずしも悪いものとは限りません。ただし、やりすぎると炎症や腱への負担につながることも…。

この記事では、指の関節が鳴る原因から、健康への影響、やめたほうがいいケースまでを医師監修のもとで詳しく解説します。クセになりがちな“ポキポキ習慣”との上手な付き合い方を学びましょう。

 

なぜ指の関節はポキポキ鳴るのか?

指を曲げたり引っ張ったりしたときに「ポキッ」と鳴る音。
ついクセでやってしまう人も多いですが、実はあの音にはしっかりとした生理学的なメカニズムがあります。
ここでは、ポキポキ音の正体や、鳴る・鳴らない指の違い、関節の構造について詳しく見ていきましょう。

音の正体は「気泡がはじける音」だった

長年、「骨がこすれる音」や「腱が動く音」と思われがちだったポキポキ音。
しかし近年のMRI研究によって、音の正体は関節内にできた“気泡がはじける音”であることが判明しています。

指の関節は「関節包」という膜に包まれており、その中には滑液(かつえき)と呼ばれる潤滑液が満たされています。
この滑液が関節の動きをスムーズに保つ役割を果たしているのですが、
指を強く引っ張ったり曲げたりすると関節内の圧力が一瞬下がり、ガス(主に二酸化炭素)が気泡として発生します。

その気泡がはじける瞬間に「ポキッ」と音が鳴る――これが“関節が鳴る”仕組みの正体です。

鳴る指と鳴らない指があるのはなぜ?

「右手の中指は鳴るのに、左は鳴らない」というように、指によって鳴りやすさに違いがある人も多いですよね。
この違いは、関節の形状や柔軟性、関節包内の圧力の違いなどが関係しています。

鳴りやすい指は、関節の可動域が広く、関節内で圧力変化が起こりやすい状態にあります。
一方で、関節が硬い・周囲の筋肉がこわばっている場合には、滑液の流動性が悪くなり、気泡が生じにくいため音が鳴りにくくなります。

また、一度鳴らした関節はすぐには鳴らないのも特徴です。
これは、発生した気泡が再び滑液に溶け込むまでに時間がかかる(およそ15〜30分程度)ためとされています。

関節の構造とガス発生のメカニズム

関節が鳴る仕組みを理解するには、「関節包」「滑液」「関節腔(かんせつくう)」という3つの構造がカギになります。

  • 関節包(かんせつほう):関節を包む袋状の組織。中には滑液が入っており、関節の安定性を保つ。

  • 滑液(かつえき):関節の潤滑油のような液体。ヒアルロン酸やタンパク質を含み、摩擦を減らす。

  • 関節腔(かんせつくう):関節包の中の空間部分。圧力変化が生じる場所。

指を引っ張ると関節腔が一瞬広がり、内部の圧力が低下。
すると、滑液に溶けていたガス(主にCO₂)が気泡として分離し、はじけることで音が発生します。

つまり、「ポキッ」という音は、骨がこすれている音ではなく、関節の中で起こる気泡現象によるものなのです。


🩺 ポイントまとめ

  • ポキポキ音=関節内の“気泡がはじける音”

  • 鳴る・鳴らないは関節の柔軟性や圧力変化の差

  • 一度鳴らした関節は、しばらく時間をおかないと再び鳴らない

 

指を鳴らすのは体に悪い?健康への影響は?

指を鳴らすのは体に悪い?健康への影響は?

「指を鳴らすと関節が太くなる」「クセにすると関節炎になる」といった話を聞いたことがある人も多いでしょう。
しかし、実際のところ医学的にはどうなのでしょうか?
ここでは、指鳴らしの健康影響について、正しい知識と注意点を解説します。

「関節が太くなる」は本当?医学的な見解

結論から言うと、指を鳴らすだけで関節が太くなるという科学的根拠はありません。
カリフォルニアの整形外科医ドナルド・ウンガー氏が、自ら片手だけを60年以上にわたって毎日鳴らし続けたという有名な実験では、
関節炎の発症率に左右差がなかったことが報告されています(この研究で彼はイグノーベル賞を受賞)。

つまり、「鳴らしただけで関節が変形する」「太くなる」ことはないと考えられています。
ただし、鳴らすときに力を入れすぎたり、無理に関節を引っ張ったりする行為は別です。
関節周辺の靭帯や腱を傷める原因になり得るため、意識的に“ポキポキ鳴らす”習慣は避けたほうが安心です。

やりすぎると炎症・腱を痛めるリスクも

「少し鳴らすくらい」なら問題ありませんが、過度な頻度や強い力で鳴らすことはリスクがあります。
関節包や靭帯は繰り返しのストレスに弱く、
何度も無理な方向に力を加えると、微細な損傷(マイクロダメージ)が蓄積します。

その結果、以下のような症状を引き起こすことも。

  • 関節周辺の炎症(腱鞘炎・滑膜炎など)

  • 指の関節の違和感や軽い痛み

  • 指の可動域が狭くなる

特に、手先をよく使う職業(デスクワーク、楽器演奏、美容師など)の方は、
もともと腱や靭帯に負担がかかりやすいため、無理に鳴らす癖は控えることが大切です。

また、ポキポキ音とともに痛み・腫れ・熱感を感じる場合は、関節炎や関節内の異常が隠れている可能性もあるため、
整形外科での診察をおすすめします。

 ストレスや緊張をほぐす“無意識行動”の場合もある

「気づいたら鳴らしている」「考え事をしているときにポキポキやってしまう」
――こうしたケースでは、指鳴らしは心理的なストレス解消行動になっていることがあります。

人は緊張や不安を感じると、無意識に体を動かすことで安心感を得ようとします。
指を鳴らす、髪を触る、ペンを回すなどの行為は、その一種です。

したがって、単なる癖やストレス反応としての指鳴らしは、必ずしも「悪い行為」ではありません。
ただし、頻度が多すぎる場合や「鳴らさないと落ち着かない」レベルまでいくと、
軽度のストレス依存行動になっている可能性もあるため、
リラックス法や呼吸法を取り入れるなど、別のストレス対処法を見つけるのがおすすめです。


🩺 ポイントまとめ

  • 指を鳴らすだけで関節が太くなるという科学的根拠はない

  • 無理に鳴らしたり、繰り返し行うと炎症や腱の損傷リスクがある

  • ストレス解消行動としての「癖鳴らし」は悪くないが、頻度に注意

 

指を鳴らす習慣、やめたほうがいい人とは?

指を鳴らす習慣、やめたほうがいい人とは?

「指を鳴らすのは基本的に害がない」とはいえ、すべての人に安全というわけではありません。
人によっては、関節や腱に負担がかかったり、慢性的な痛みにつながる場合もあります。
ここでは、特に“指鳴らしを控えたほうがいい人”の特徴を紹介します。

痛みや腫れを伴う場合は要注意

指を鳴らしたときに痛み・腫れ・熱感・引っかかり感などがある場合は、
関節や腱、靭帯の炎症が起きている可能性があります。

特に以下のような状態は注意が必要です:

  • 鳴らすと痛い・指がこわばる

  • 朝方に関節が動かしにくい

  • ポキポキ後に赤み・腫れが出る

  • 以前より関節が変形してきた

これらの症状がある場合、関節炎(リウマチ性や変形性など)や腱鞘炎の初期サインの可能性も。
「クセだから大丈夫」と放置せず、整形外科で原因を確認しておくことが大切です。

痛みを感じながら鳴らすと、炎症部分にさらなる刺激を与え悪化させるリスクがあるため、
そのようなときは鳴らす行為自体をストップするのが最善です。

職業柄、手指を酷使する人は特に注意を

仕事や趣味で手を頻繁に使う人は、関節や腱に常に負荷がかかっています。
そこにさらに“指鳴らし”を重ねると、炎症や疲労が蓄積しやすくなるのです。

たとえば、以下のような職業・作業を行う人は要注意:

  • パソコン作業・デスクワーク中心の人

  • 美容師・整体師・マッサージ師

  • 楽器演奏者(ピアノ・ギターなど)

  • スマホやゲームの操作時間が長い人

これらの人は、関節の動きが偏りやすく、滑液の循環バランスが崩れやすい傾向にあります。
“ポキポキ鳴らす”ことで一時的なスッキリ感は得られても、
長期的には腱や靭帯を痛める可能性があるため、鳴らす習慣は控えめに

代わりに、

  • 手首や指のストレッチ

  • グーパー運動

  • 手のひらマッサージ
    などを取り入れると、関節に優しくリフレッシュできます。

クセになりやすい人の心理的特徴

指を鳴らす習慣は、心理的なクセとして定着している場合もあります。
とくに次のようなタイプの人は、無意識にポキポキやってしまう傾向があります。

  • 緊張しやすく、集中しているときに手が落ち着かない

  • 不安やストレスを感じると体を動かしたくなる

  • 無意識に同じ動作を繰り返すクセがある

  • “鳴らす音”に安心感や快感を覚える

こうした行動は、心理学的には「セルフ・スージング(自己安心行動)」と呼ばれます。
つまり、不安やストレスを軽減するために無意識で行っている行動です。

もし、

  • 勉強や仕事中に何度も鳴らしてしまう

  • 鳴らさないと落ち着かない
    といった状態なら、ストレス過多のサインかもしれません。

この場合は、深呼吸・軽い運動・ハンドケアなど、
別の方法でリラックスできるルーティンを見つけることが、
「鳴らす癖」を自然に減らす第一歩になります。


🩺 ポイントまとめ

  • 痛み・腫れ・熱感がある場合はすぐに中止し、医師に相談を

  • 手指を酷使する仕事の人は“関節の酷使+鳴らし癖”でダメージ増

  • ストレスや不安が原因の「無意識鳴らし」は、癖より心のサイン

 

無意識でポキポキ鳴らしてしまうときの対処法

無意識でポキポキ鳴らしてしまうときの対処法

「気づいたら鳴らしていた」「無意識にやってしまう」――。
指をポキポキ鳴らす行為は、習慣化すると意識して止めるのが難しくなります。
しかし、“鳴らしたい衝動”の多くは、関節よりも心や体の緊張から来ているもの。
ここでは、自然にやめられるようにするための効果的な対処法を紹介します。

手をストレッチして“鳴らしたい衝動”を和らげる

指を鳴らしたくなるときは、手の筋肉や関節がこわばっているサインです。
その代わりに軽いストレッチで、関節まわりをゆるめることがおすすめです。

▶ 簡単ストレッチ例

  1. 手のひらを上に向け、もう片方の手で指をそっと反らせる(10秒キープ)

  2. 手のひらを下に向け、手の甲を押さえて反対方向に伸ばす(10秒)

  3. 手を握ってグー→パーを5回繰り返す

  4. 手首をゆっくり回す(内回し・外回し各5回)

これらの動きを行うことで、
滑液の流れがスムーズになり、関節内の圧力変化が自然に整います。

「ポキポキしたい」と思った瞬間にストレッチへ切り替えるだけでも、
鳴らす頻度を大きく減らすことが可能です。

ストレス発散法を見直す

無意識に指を鳴らす行為は、ストレスや緊張を解消する無意識のサインでもあります。
そのため、根本的に減らしたい場合は、「ストレスの出口」を変えるのが効果的です。

▶ ストレス解消におすすめの方法

  • 深呼吸や軽い瞑想を取り入れる

  • 休憩時間にストレッチや軽いウォーキングを行う

  • アロマやハーブティーで“リラックスのスイッチ”を作る

  • モヤモヤしたときは、ノートに書き出して整理する

こうした方法を続けると、
「手を動かして落ち着きたい」という無意識行動が自然と減っていきます。

もし仕事中などでイライラを感じたときに指を鳴らしてしまうなら、
“代わりの習慣”として指ストレッチや呼吸リセットをルール化してみましょう。

デスクワーク中は「グーパー運動」で代用

長時間のパソコン作業中は、手や指の血流が滞りやすく、その違和感が「鳴らしたい衝動」につながることがあります。
そんなときにおすすめなのが、「グーパー運動」。
シンプルながら、関節と筋肉のリラックス効果が高い方法です。

▶ グーパー運動のやり方

  1. 手をしっかり開いてパーの形に(5秒)

  2. 次に、しっかり握ってグーに(5秒)

  3. これを10回程度繰り返す

この運動により、

  • 手の筋肉がやわらぐ

  • 血流が促進される

  • 鳴らしたい衝動が減る
    といった効果が期待できます。

さらに、手を下げた状態でグーパーを行うと、肩や腕の緊張も同時に緩和され、
全身のリラックスにもつながります。


🩺 ポイントまとめ

  • 「鳴らしたい」と感じた瞬間にストレッチへ置き換える

  • ストレスを別の形で発散し、“無意識鳴らし”を減らす

  • デスクワーク中はグーパー運動で血流を改善

 

ハンドグリップはこちら🔻

 

まとめ|「ポキポキ音」と上手に付き合おう

まとめ|「ポキポキ音」と上手に付き合おう

適度なら問題なし、痛みがあるなら専門家に相談を

指を鳴らす行為は、適度であれば大きな健康被害はありません。関節の中で発生する「気泡の破裂音」が原因であり、医学的には一時的な音に過ぎないことが多いです。
ただし、「鳴らすたびに痛みがある」「関節が腫れている」「動かすと違和感が続く」といった症状がある場合は注意が必要です。炎症や腱、靭帯の損傷の可能性もあるため、整形外科や整骨院で専門家に相談するのが安心です。

クセとの付き合い方が、健康な関節を保つコツ

指を鳴らすのは、ストレス発散や集中のきっかけになる“無意識の行動”でもあります。無理に我慢すると逆にストレスが溜まるため、「鳴らしたくなったら軽くストレッチをする」「深呼吸で気を落ち着ける」など、別の方法に置き換えるのがおすすめです。
「鳴らす=悪いこと」と決めつける必要はありません。大切なのは、“痛みなく、ほどほどに”を意識して上手に付き合うこと。関節の健康を守りながら、ストレスのない日常を目指しましょう。

 

 

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