「家に帰るのが怖い」と感じるときに読んでほしい｜その原因と心が少しラクになる考え方

Posted on 2025年7月13日

カテゴリ：メンタルヘルス

「家に帰るのが怖い」「玄関の前で足が止まる」――
そんな気持ちを抱えたまま、誰にも言えずにがんばっていませんか？

本来なら安心できるはずの場所が、なぜか苦しく感じてしまう。
その違和感には、心が発している大切なサインが隠れています。

この記事では、「家が怖い」と感じる理由や背景をやさしくひもときながら、
少しでもラクになるための考え方や、実践できる小さな工夫をご紹介します。

大丈夫。無理に克服しなくていいんです。
あなたのペースで、“安心できる感覚”を取り戻していきましょう。

「家に帰りたくない」「帰るのが怖い」と感じる瞬間とは

家のドアの前で足が止まってしまう

ふだん何気なく通っているはずの玄関の前で、なぜか急に動けなくなる――。
「帰らなきゃ」と思っていても、ドアノブに手が伸びない。そんな経験はありませんか？

それは、あなたの中で「家＝安心できる場所」ではなくなっているサインかもしれません。
無意識のうちに心が“ここに入るとしんどくなる”と感じているとき、人は本能的に足を止めます。

まずは、自分を責めないことが第一歩です。
心はとても敏感です。ちゃんと理由があるから、体がブレーキをかけているのです。

帰り道に胸がざわつくのはなぜ？

職場や学校、出先からの帰り道。ふと胸がザワザワして、落ち着かない。
それは、家の中に“気がかり”や“避けたいこと”があるからかもしれません。

たとえば――
・帰っても誰とも話さず孤独を感じてしまう
・家族との関係がぎくしゃくしていて気疲れする
・片付いていない部屋を見るのがつらい
・自分だけの時間が持てないプレッシャーがある

小さな不安や違和感の積み重ねが、「帰る＝ストレス」と感じさせてしまうのです。
ザワつきは、あなたの心が「少し休ませて」と訴えている合図なのかもしれません。

“安心できるはずの場所”が、なぜか怖い

「家って、本来なら安心できる場所なのに、なぜ私は怖いと感じるんだろう」
そう思って、自分を責めていませんか？

でも、安心できるかどうかは“場所”ではなく、“そこでどんなふうに過ごせているか”が大きく影響します。

たとえば――
・常に気を張っていないといけない空気感
・過去に傷ついた記憶が家に残っている
・誰かの目を気にして過ごさなければいけない環境

そんな空間では、心が休まるはずもありません。
「家なのに怖い」と感じるのは、むしろあなたが敏感で優しい証拠。
それだけ心のセンサーが正常に働いているということです。

まずは「怖い」と思っていい。
そして、少しずつ「怖さのない時間」「安心できる空間」を自分の中に取り戻していくことが、次のステップです。

なぜ「家が怖い」と感じてしまうのか？よくある原因

家庭内にストレスの元がある

家族との関係、パートナーとの摩擦、繰り返される言葉のトゲ――。
家という空間にストレスの原因があると、本来くつろぐはずの場所が“緊張する場所”に変わってしまいます。

たとえ直接的な暴力がなくても、
・常に顔色をうかがってしまう
・無視される、否定される
・何気ない会話すら安心してできない
といった環境は、心をすり減らしてしまいます。

【対策のヒント】
まずは「私はここで安心できていない」と認めてあげましょう。
信頼できる第三者や外部の支援（相談窓口・カウンセリング）に話すだけでも、心の緊張が少しほどけることがあります。
“家の中の自分”を守る手立てを、外の世界に持つことが大切です。

過去の体験がフラッシュバックする

かつての家族との関係、トラウマになるような出来事――。
過去の「家に関する嫌な記憶」が、今の家にも影を落としていることがあります。

音や匂い、時間帯、ちょっとした会話が引き金となって、
当時の不安や恐怖が、まるで昨日のことのようによみがえってくるのです。

【対策のヒント】
「これは過去の記憶だ」と意識的に区切ることが、第一歩。
そして、“今の自分”が“当時の自分”を守るようなイメージで、「もう大丈夫だよ」と語りかけてあげてください。
必要であれば、専門家に話して整理することも効果的です。
過去に縛られすぎず、今の安全を一つひとつ確認していきましょう。

自分を責める思考が強くなっている

「今日もちゃんとできなかった」
「またイライラしてしまった」
「私がもっとちゃんとしていれば…」

そんなふうに、自分の心をどんどん追い詰めてしまう癖があると、
家という“自分に向き合う場所”が、どんどん苦しくなってしまいます。

責める声が強いと、安心よりも“自己嫌悪の嵐”が吹き荒れてしまうのです。

【対策のヒント】
まずは、責める声に対して「本当にそうかな？」と問いかけてみましょう。
ひとつできたことに目を向ける、“責める代わりに労う”ことを習慣にしてみるのもおすすめです。

たとえば――
「今日は帰ってこれただけでも十分」
「しんどかったのに、よく頑張ったね」

そう声をかけてあげるだけで、少しずつ心の空気が変わっていきます。

一人になることで不安や孤独が浮かび上がる

家に帰ってドアを閉めた瞬間、しんと静まり返る部屋。
その静けさが、逆に心のざわつきを引き出してしまうことがあります。

人といるときには感じなかった「不安」「さみしさ」「むなしさ」が、
一人きりの空間でいっせいに押し寄せてくることもあります。

【対策のヒント】
完全な“静けさ”を避けて、自分にとって心地よい“安心の音”を用意しましょう。
・好きな音楽
・ラジオやポッドキャスト
・キャンドルの揺れる灯りやアロマの香り

「帰宅＝孤独」の図式をやわらげてくれる、小さな“ぬくもりのある習慣”を育てていくのがコツです。

「怖い」と感じる心を否定しなくていい

あなたの感じ方は“間違っていない”

「なんで私はこんなことで怖くなるんだろう」
「他の人は平気なのに、自分だけおかしいのかな」

そんなふうに、自分の感情に疑問や否定の言葉を投げかけてしまうこと、ありませんか？

でも、あなたの“怖い”という気持ちは、ちゃんと意味があるものです。
他の人と違っていてもいいし、理由がはっきりしなくても構いません。
怖いと感じた――その“感じ方”そのものが、あなたの心の正直な声です。

【対策のヒント】
「これは怖がってもいいこと」と、まずは自分で自分に許可を出してあげましょう。
正しさではなく、“自分の感覚”を一番の基準にしてみるだけで、心の緊張が少しほどけていきます。

心が発しているサインに、そっと耳をすませて

“怖い”という感情は、心からのSOS。
怒りや悲しみと違って言葉にしづらいぶん、見過ごされやすいけれど、実はとても深いメッセージを含んでいます。

・このままだと苦しくなってしまうよ
・自分を大切にしてね
・無理していることに気づいて

そんな声を、心は“怖さ”という形で伝えようとしているのかもしれません。

【対策のヒント】
まずは「今、私はどこが怖いと感じてる？」と自分に問いかけてみましょう。
“場所”かもしれないし、“人間関係”かもしれない。
あるいは、“ずっと無理している自分”かもしれません。

答えが出なくても大丈夫。問いかけるだけで、心は「わかってもらえた」と少しずつ落ち着いていきます。

「怖さ」は、“我慢の積み重ね”が教えてくれることもある

ある日突然、家が怖くなったように思えるかもしれません。
でも実は、その“怖さ”の根っこには、小さな我慢がずっと積み重なってきたのかもしれません。

・本当は休みたかったのに頑張り続けた
・傷ついても笑ってやりすごした
・怒りや悲しみを言葉にできなかった

そうした我慢を無意識に積み重ねてきた結果、心が限界に近づくと、
「もうこれ以上は無理」と、怖さという形でストップをかけてくることがあります。

【対策のヒント】
「私、ここまでよく耐えてきたな」と、自分を労わる言葉をかけてあげてください。
怖さは悪者ではなく、“限界を知らせてくれる大切なサイン”なのです。

がんばり屋のあなたほど、見逃してしまいがちな心の声。
だからこそ、いま怖いと感じている自分を、大事に、大事にしてあげてください。

少しでもラクになるためにできること

安心できる人や場所を“心の避難所”にする

家が怖いと感じるとき、心はとても敏感になっています。
だからこそ、「安心できる人」「ほっとできる場所」を、意識的に自分のそばに置いておくことが大切です。

たとえば――
・何気ない会話ができる友人
・ただ静かに一緒にいてくれる人
・お気に入りのカフェや図書館、公園のベンチ

“ここにいるときの自分”がラクになれるなら、それはもう十分な「心の避難所」です。

【対策のヒント】
つらいとき、「ここに逃げよう」と思える場所があるだけで、人の心はふっと軽くなります。
自分だけの“心の逃げ道”を、いくつか見つけておけると安心です。

「帰らなきゃ」を「ちょっと休もう」に変えてみる

「家に帰らなきゃ」と思うほど、足が重くなる。
そんなときは、“帰る”をゴールにしない考え方が助けになります。

たとえば――
・帰り道にコンビニや本屋に寄り道する
・近くのベンチで10分だけ座って深呼吸する
・好きな音楽を聴きながら、歩くペースを落としてみる

「帰る前にちょっと休もう」「一息ついてからでもいい」
そう思うだけで、気持ちにゆとりが生まれて、「帰る＝怖い」気持ちが少しやわらぎます。

【対策のヒント】
無理に“いつも通り”を目指さなくても大丈夫。
“いったん立ち止まる”ことが、次に進む力になります。

香り・音・光で“自分だけの安心空間”をつくる

たとえ家が完璧に安心できる場所でなくても、自分だけの“ほっとできる一角”をつくることはできます。

たとえば――
・好きな香りのルームスプレーやアロマ
・静かなBGMや自然音のプレイリスト
・やわらかな間接照明やキャンドルの灯り

視覚・嗅覚・聴覚を「安心」に切り替えるだけで、心が少し落ち着いていきます。

【対策のヒント】
“安心できる要素”を五感で感じられるようにすることで、家の中の空気が自分仕様に変わります。
「自分の味方になる空間」を、小さくてもいいからひとつ、つくってあげてください。

信頼できる相談窓口や支援を活用するのも大切

「誰にも言えない」「自分が悪い気がする」
そんなふうに感じて、つらさを抱え込んでいませんか？

でも、あなたの“怖い”という気持ちに、寄り添ってくれる人は必ずいます。
家族や友人に言いづらいときは、公的な相談窓口や専門のカウンセラーなど、
“話しても安全”と思える相手を見つけることがとても大切です。

【対策のヒント】
・自治体の女性相談センター
・心理カウンセラー
・オンラインやチャットでの無料相談
など、無理せずつながれる窓口も増えています。

誰かに話すだけでも、「ひとりじゃない」と感じられ、心がふっと軽くなることがあります。
“助けを借りる力”も、大切なあなたの強さです。

まとめ｜“帰るのが怖い”の奥にある心に気づいてあげよう

無理に克服しなくていい。小さな「安心」から始めて

「怖い気持ちをなくさなきゃ」
「普通に帰れるようにならなきゃ」

そんなふうに思ってしまうこと、ありますよね。
でも、本当に大切なのは“克服”よりも、“心が少しラクになれる瞬間”を見つけていくことです。

小さなことからでいいんです。
・家に入る前に深呼吸する
・好きな音楽を流しながら帰る
・「今日は玄関まででOK」と決める

大きく変わろうとしなくても、小さな安心が重なっていけば、
心はちゃんと整っていきます。

あなたの感じ方も、心のペースも、誰かと比べなくていい

「他の人は平気で帰ってるのに」
「どうして自分だけ怖いんだろう」――そんなふうに、自分を責めていませんか？

でも、人の感じ方はそれぞれ違います。
生きてきた背景も、心の傷も、今いる環境も、すべてがあなただけのものです。

だから、回復のペースも比べなくていい。
ゆっくりでも、止まっても大丈夫。
「いまの自分」を責めないことが、いちばんのやさしさになります。

“安心できる場所”は、少しずつ取り戻せるから

今は怖く感じてしまう「家」という場所も、
あなたの心の中に安心が増えていけば、きっと少しずつ意味が変わっていきます。

それは、環境が変わるからだけではなく、
“あなた自身の心の在り方”が変わっていくからです。

・怖さを感じたときに自分を責めない
・「今日はここまでで十分」と思える
・小さな心の避難所を、日常に持つ

そんな工夫が重なることで、
“帰っても大丈夫な自分”が、少しずつ育っていきます。

今はただ、「怖いと感じるのも、それでいい」と、
そのままの自分を受け止めてあげてください。
安心は、外から与えられるだけでなく、自分で育てていけるものだから。

この記事を書いた人
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佐藤彩香（心理カウンセラー）｜ご支援はこちら

国家資格キャリアコンサルタント・メンタルヘルス・マネジメント®検定II種取得。企業での人材育成や新入社員研修の経験を経て、現在は心理カウンセラーとして個人・法人向けにカウンセリングや研修を行っています。働く人の「こころの健康」を守ることをミッションとし、職場のストレス、自己肯定感の低下、人間関係の悩みに寄り添いながら、年間300件以上の相談に対応。信頼される「話し方」や「聴き方」のプロとして、多くのメディアにも情報提供を行っています。「ひとりで抱え込まないで。一緒に考えることで、こころは軽くなる。」